5歳になったら。

5歳の誕生日

4歳の誕生日とは明らかに違ったのが、半年前からずーっとわくわく待ち続けていたことだ。娘は真夏の8月生まれなのだけれど、夏の暑さなどまだ到底想像できない真冬にはもう誕生日プレゼントの打診があった。ブックオフに本を買いに行った時、おもちゃコーナーでいいなと思う魔法ステッキをたまたま見つけがっちり射止められたようで、それから半年間、事あるごとに「早く8月来ないかな〜、お誕生日お祝いしてね!魔法ステッキね!」と、もうキリンになる勢いで待ち続け、両親に5歳の誕生日=魔法ステッキを刷り込んだ。「プリンセスみたいな、長くてピカピカ光るやつね!キャラクターとかは何でもいいから!」と、毎度、初めて聞く人に説明するみたいな新鮮さと詳細さで話し、魔法ステッキへの熱量を見せつけた。運動会の練習が始まって、数ヶ月間同じ曲を流し続け、1日中歌いまくり、もうほんと頭おかしくなりそうだったと先輩ママから聞いたことがあるが、似たような状況だったと思う。自分の経験から、欲しい物というのは際限なく出てくるし結構ひょんなことで変わったりもするから、「今は魔法ステッキだけどまた気持ちが変わるかもしれないし、変わったら教えてね」と言うと「変わったら教えるけど、たぶん変わらんと思う」とものすごい自信と迫力で、結局変わらず求め続けたのだから大したものだ。そこまで言い切れるほど気持ちが固まっているがゆえの主張だったのかと、もはや頭がさがる。とは言え、キャラクターは何でもいいという、意志もこだわりも強いがこだわり切らないテキトーさが実に娘っぽくて面白い。思えば4歳の時は、誕生日が特別な日という認識はあったけれど、プレゼントが欲しい!とも言わず、リクエストを聞いても反応が薄かったし、なんかみんなにお祝いしてもらうらしい〜とどこか他人事だったから、当日もあっ今日が誕生日ですか私!みたいな感じで意外とぬるっと終わった。幼稚園も年中さんになって、行事やお友だちとの会話の中で誕生日というものの重さを知り、特別感が湧き、ここまでの高まりようになったのだろう。
それはそうと、わくわく待ち続けたのはプレゼントだけではない。同じくらいの熱量で、身長にも並々ならぬ期待を寄せていた。「あのね、5歳のお誕生日にはこーんなにおっきくなるよ!」と背伸びをし、右腕をうーんと頭の上まで突き上げキラッキラの顔を向ける。まるで5歳になった瞬間ににょきっと背が伸びるようなことを言うからこれはちょっと現実を伝えた方が良いかと思ったが、あまりに信じて疑わない目をしていたものでかわいそうになり「そんなにおっきくなるー!?」と一旦やり過ごした。それからも度々、お誕生日にはママの背くらい伸びます宣言をしてきて、実際それはあり得ないことだし、当日そうなっていなかったらがっかりするだろうと思いやんわりと「身長って一気にぐいーんとは伸びなくて、少しずつおっきくなっていくんだよ」と伝える。それでも、「えっおっきくなるよ!?」と食い下がってきて、変わらず揺るぎなさが前面だったからまあいいかとあきらめて「そうだといいよね〜」と同調した。
さて、5歳の誕生日まであと1ヶ月となった頃、そろそろプレゼントを決めねばと思い、「もう来月がお誕生日だけど、結局魔法ステッキで大丈夫?」と確認すると、「大丈夫!ボタンを押すとピカピカ光って音が鳴るやつがいい!」と抜かりなく説明してくれる。「キャラクターは何でもいいんだもんね?3つくらい探してみるから、その中から欲しいの選んでくれる?」と言うと、「わかった!えっいつ探す?今日?」と居ても立っても居られない様子だったからすぐ探すと伝えると、「じゃあこっちにいるね!見ないでおくね!」と、主役には内緒で準備する母という役を与えられ可笑しくなる。Amazonで調べてみると、想像よりも長さが短いステッキが多かったり、光るには光るが光り方が懐中電灯並みにシンプルだったりしてなかなか手こずった。が、何とか3つを決め、リボン、星、三日月がシンボルになっている魔法ステッキを娘に提示する。光り方や鳴り方のイメージがつくように、動画を見せながらそれぞれ説明すると「三日月がいい!」と即決したからさすがだなと感心する。娘は決断の大小にかかわらず迷わない。自分が望んでいるものをピンと嗅ぎ取り、がしっとつかむ。タイミングやチャンスを逃しまくって生きてきた私からするとうらやましいし、まっすぐ潔く生きる娘は憧れの存在だ。それはさておき、3つの中なら私も三日月が1番ステッキっぽくてクオリティーが高いなと思っていたから、好みが一緒で嬉しい。なにしろこれは、幼少期に大好きだった美少女戦士セーラームーンのムーンスティックなのだ。7色LEDを搭載した幻の銀水晶はカラフルにピッカピッカ光って魅力的だし、セーラームーンが「ムーンヒーリングエスカレーション!」と叫んでくれるのもわくわくする。見つけた時、娘が選ばなかったとしても自分用に買うんじゃないかと思うレベルで興奮してしまったから「いいよね!三日月かわいいよね!」と娘以上にはしゃぎ2人できゃはきゃはした。とは言え、まだ考える時間はあるから「何日か悩んだら?」と言うと「大丈夫!気持ち絶対変わらない!」と決断力がすごい。パパにも報告してから買うと伝えると「お願い〜!いつ届く?」と聞くから、来週には届くがプレゼントするのはお誕生日当日だから存在は一旦忘れて過ごすようにと伝えると、「絶対見つからないように隠してね!クローゼットとかね!」と念を押される。数日後、ラッピングされたプレゼントが届いたから、娘が幼稚園の間に段ボールから出してクローゼットの高い所へ隠す。帰ってきて、「届いたからちゃんと隠したよ」と伝えると「早く遊びたいな〜」とあわよくば感を出してにまにましたから、あと1ヶ月くらいあるからそれまでのお楽しみだねといなしておやつを食べた。
いよいよ1週間前になると、もうすぐだね!誕生日!みたいな会話が1日に何度も繰り返され、そうかいよいよかと胸が弾む。ちょうど土曜日にお祝いだから、午前中はみんなでプリクラを撮りに行って、毎年行く思い出のレストランでお昼を食べることになっている。バースデープレートでお祝いするのもいいかなと思ったのだが、家に帰ってきてから好きなケーキをゆっくり食べようということで買い出しの予定を立てる。「金曜日、幼稚園お休みだからお誕生日のケーキ買いに行こっか」と話すと、「じゃあ〜ショートケーキとチーズケーキがいい!丸いのじゃなくて三角のやつ買う!」とまた強い意思表示があったからそうしようそうしようと従う。前日、お気に入りのケーキ屋さんに出陣して、主役ご所望のケーキと大人用にブリュレやらモンブランやらも買い込む。「あーもう今すぐ食べたい〜!」と甘え上手を出す娘に「明日明日〜」と歩いていると、ケーキも手に入れていよいよお誕生日会を夢想したのか「あのさ、朝起きたらお誕生日おめでとうーとか拍手してお祝いして、ケーキ食べる時はハッピバースデートゥーユ〜とか歌ってね!」と細かく指示出しがあってさすがに吹いた。主役自らプロデュースし、細部まで段取る。全てを把握してスムーズに進めるということに気迫がすごいのは娘の性質だけれど、マイバースデーともなるとその勢いが格別だ。おっけーおっけーとしかと承り、夜は娘が寝てからパパと壁の飾り付けをした。去年の誕生日も、朝リビングに来たら驚くように風船でいっぱいにしたのだ。
さあ当日、「ねえ!今日お誕生日だよ!」という声で目が覚め、そうだそうだと一緒にリビングに行くと「わあああああー!!!」と手を叩いて喜んでくれたから良かった良かったと両親顔を見合わせ、シナリオ通りとびきりの「お誕生日おめでとう!!!」をぶちかます。「5歳になりました〜!」と意気揚々な娘にちょっと待っててねと声をかけてプレゼントを取りに行く。「はい!プレゼント!おめでとうー!!!」と渡すと早速開けて、セーラームーンさながらくるくる回りながら「かわいいー!!!」とはしゃぐ。動作確認用の電池がもともと入っていたから、本体に幻の銀水晶を取り付けてボタンを押すと、ガラガラガラガラガラガラピシン!ピュイーーーン!チャララチャララチャラララン♫というメロディーと共に光り出し、シュインシュインと変身できそうな音が鳴る。そして「ムーンヒーリングーーーーエスカレーショーン!」が繰り出され、気分はもうほんとにセーラームーンだ。娘はセーラームーンを知らないが、鮮やかな光と迫力あるセリフにテンションが上がりまくり、パパを怪獣に仕立てあげ高らかにムーンスティックをかざしてじゃんじゃん倒し、変身もさせていた。どうやらスティックのお尻部分でセリフ有り、無しと変えられるようだし、銀水晶の有り無しで効果音やボイスも変わるようだから工夫がものすごい。セーラームーン世代としてはたまらない。うらやましそうな顔で見てしまっていたのか「やってみる?」と貸してくれたので、「ムーンヒーリングエスカレーション!」をやらせてもらう。うん、なんかもう感無量だ。大事に扱おうということで、付属の専用台座に静かに鎮座させ、娘の机に飾った。

そういえば…「5歳になって背伸びた?」と聞くと、洗面台まで走り頭をなでなでしながら、「うーんあんまり伸びなかったかなあ…明日かな?」とのんきにしていたからほっとする。「これからどんどん伸びるよ!」と激励して、「パパよりももっともっともーっとおっきくなるんだから!」と希望いっぱいの娘とけらけら笑った。
無事パーティーをひと通り終え、「5歳の間にやりたいこととか、できるようになりたいこととかある?」と聞いてみると、「アイロンがけやってみたい」と意外な答えがスッと返ってきておぉ!となる。娘の持ち物にアイロンシールを貼っている時、いつも隣に張り付いてじーっと見ているのはそういうことだったのか。「いいねいいね、じゃあちゃんとアイロン台買ってやろうね!ハンカチならすぐ上手にできるよ!」と言うと、「やりたいやりたい!」と飛び跳ねる。そんなに楽しみなことがあって私も嬉しい。

それはそうと、あんなに食べたい食べたい言っていたショートケーキとチーズケーキは、パパのモンブランにそれはもう軽々超えられた。ぬったりとした恐ろしく重たい甘さにまんまと踊らされ、磁力でも働いてるんかなと思うほど身を乗り出して、マロンに恋する子犬状態だ。こうなるともう誰も娘を止められない。「モングランおいしいー!来年のお誕生日はモングランにする!」「ブね!モングランじゃなくて、モンブ!ランね」

まーむ

5歳の誕生日が終わってまだ間もないけれど、すでに「6歳のお誕生日はモンブラン食べよ〜」と約束を取り付ける娘であった。

5歳の誕生日

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