もともと寝ることが好きという娘の性質にねんねトレーニングがバチっとはまって、いついかなる時でも睡眠を重んじる子どもに育った。と言っても、眠くなったらいつでもどこでも寝、体のために仮眠を取るとかそういうことはなく、夜のロング睡眠に全てを懸けているからむしろ昼間は決して寝ない。よく子どもの動画で、ごはんを食べながらうとうとし頭がぐらんぐらんになりながらも口にスプーンを運ぶみたいなかわいいシーンや、じゃかじゃか遊んでいたかと思ったらぼすっと床に突っ伏してくーくー寝始めるみたいな愛しさでもだえそうなシーンを見るが、私は5年近く一緒にいて一度もそれに出くわしたことがない。旅行でちょっと羽目を外して寝不足なままベビーカーに乗り、気が付くと静かに眠っていたみたいな場面は何度かあるけれどそれもレアケースだ。そもそも普段、毎夜12時間ほどしっかり眠っているから昼間に電池切れになることがほぼなく、子どもにも月のサイクル的なものがあるのかごろんごろん眠そうにしている日が定期的にあるものの、基本的にはいつもぴんぴんしている。いつだって凛として気が確かな娘であることに有り難がりつつも、ちっちゃい子どもならではなあの名シーンが見られないのはものすごく残念だなと思う。
幼稚園に入るまでは我が家もしっかりお昼寝をしていたのだが入園とともにやめ、その分早く就寝してがっつり眠るというスタイルに変えた。お迎えが14時半ということもあり、それから帰って着替えておやつを食べてとなると、お夕寝くらいになってしまい夜寝るのが遅くなるからお昼寝はあきらめた。最初のうちはお昼寝がなくなったことで疲れが溜まり、帰ってきてからちょっと眠って多少の充電をしたりしていたが、夜スッと眠れないことに本人が嫌がって「夜寝られなくなるからお昼寝はしない」と堂々意志表明したから従った。刻んでちょこちょこ寝るよりもいっぺんに思い切り寝たいという娘の願望を叶えるべく、大体18時〜18時半の間に寝、朝6時くらいに起きるというスケジュールで動く我が家だ。朝もうちょっとゆっくりでもいいかなと思ったりもしたが難しいもので、7時くらいまで寝てしまうと使い切るはずのエネルギーが余っているのかもう夜の入眠がうまくいかない。どうやら今の娘の生活スタイルと体力だと、12時間活動し12時間眠るくらいのバランスがちょうどいいようだ。何であれ娘のおかげで大人の日常も規則正しく、仕事も自分の時間ももりもり取れるから本当に助かっているし、よく眠ることで活力がみなぎり切っている3人はしっかり食べしっかり動きわっさわっさと健康に生きている。そしてその日常の中で調子が良いことの価値を知り、整うことに味をしめた娘は非日常でも睡眠を重んじるようになった。
夏、近所で花火大会があるから今日は特別な日ねと、ちょっと遅いスタートだなと思いつつも20時から3人わいわい家を飛び出して自宅近くの橋で構えた。ちょうど建物が並ぶ辺りで打ち上げられまんまる綺麗には見えなかったけれど、夏の夜を光と音で彩ってくれる花火に大興奮し「もっとあがれもっとあがれ〜」と娘もきゃっきゃ騒ぐ。花火を観ながらの夜風は最高に心地良く、こんな夜遅くに外にいる特別感に3人でるんるんして写真も撮りまくった。40分くらいの花火大会だからめいっぱい楽しんで21時には寝られればおっけーのつもりでいたのだけれど、半分くらい観たところで「もう帰って寝たい」と花火<睡眠を宣言する娘に「えっむしろこれからがクライマックス…!」と母はおたおたする。私は新潟出身なもので小さい頃から毎年長岡花火を観てきたのだけれど、約2時間くらいの大花火大会だから家族でどっさりお弁当を持って河川敷を陣取り、最後目玉の正三尺玉までしっかり観てそれでも名残惜しくて終わった後も余韻に浸っていた。花火師さんたちの思いは最後の一発まで込められていることを知っていたから「ねぇこれからがすんごいんだよ!年に1度この日のために命を懸けている花火師さんたちってかっこいいよね!」とどうにか盛り立てて最後まで観ることに成功した。いや〜綺麗だったね〜とふんふんしながら家に戻るも着くなり「寝る〜」と娘は寝室に直行し即寝した。花火の日など親に言われなければいつまででも起きていたいタイプだったから、娘のナチュラルな優等生っぷりに衝撃を受けた。
USJへ旅行した時は、1日目遊び倒し買ったばかりのミニオンも引き連れて夜レストランで肉を喰らい、有頂天のままミニオンだらけのホテルへ帰ると想像以上に広い部屋だったから娘は嬉しすぎてベッドの上を転げ回った。旅行の醍醐味は食べることと、素敵なホテルでくつろぐことだと毎度張り切るだけあって、遊び疲れなど微塵も感じさせないテンションでかっかしていた。大人2人も触発され窓から見えるきらびやかなテーマパークを前にぎらぎらし出し、特別だもんねと1階のショップにアイスを買いに行き3人仲よく夜アイスをした。最高だ最高だと、明日も朝から遊べる喜びで心は踊りまくりちょっとほんとに楽しみすぎる〜!今日は眠れんね〜などとどんちゃんしていたのだけれど、お風呂に入り全てを洗い流すと我に返ったのか娘は静かに寝床を整え出した。母の入浴が終わるのを待っていてはくれたものの、あがるや否や「そろそろ寝よっか」と就寝に率先的だったから急いで寝る支度をし、明日へのたぎる思いに蓋をしてベッドに入った。
まだまだエピソードはあるがとにかく非日常でも睡眠がブレないのが娘である。さすがにお友だちとかがいれば話は変わるでしょ?と思われるかもしれないが、おばあちゃんやお友だちとのお泊まり会の時でさえこっちが言わずともいそいそ寝る準備をし「眠いからもう寝る〜」と自分で布団に入る。なんなら、非日常に楽しさと若干の疲れを感じぼやぼやとしている大人たちに「もう歯磨きして寝る時間だよ」と持ち前の姉御肌をぶいぶい発揮し体調管理に余念がない。子どもというのは日常・非日常に関わらずもう寝る時間だと言ってもまだ遊ぶ!と遊び続け、寝たくない!とジタバタしながらいつの間にか電池切れするというような生き物だと思っていただけに、娘のおばあちゃんのような規則正しさには毎度驚かされる。おそらく、活動時間に対する体の疲れや眠気に敏感で、かつルーティン好きというのが娘の自己管理能力をむくむく高めている要因なのではないかと思う。普段おちゃらけているからわからないけれど、いかなる時でも自分の体のサインを見過ごさず、習慣という秘技をも繰り出せる娘は、楽しい時わーいわーいと無抵抗で流される私とは似ても似つかない。
もともと寝るの大好きルーティン大好き夫婦のところへやって来たくらいだから同系統だとは思っていたが、むしろ軽々超えていてこれこそトンビがタカを生むというやつではあるまいか。しかも娘は良いことだからと言って強要することはなく、あくまで自分のやるべきことをやり、自分のスタンスを貫くだけという姿勢だからかっこいい。家族といえど人それぞれの生活があり、必要なものがおのおの違うということを感覚として知っており、できる時もあればできない時もあるという人間の不完全さも心得ているようなところがあるから、柔軟さもあわせ持つ風紀委員という感じでそんなのもう惚れてしまう。
トンビの両親はとうとう「娘の人生が良かったよね」などと、娘として生まれたかったよ〜願望を熱心に話したりして、娘への敬意を日々高めている。










