100%感動するための発表会でも揺るぎなかった面白さ。

子どもの発表会を観る親

娘のことを、食欲が洋服を着て走り回っているような子、と表現したことがあるのだけれど、それに負けず劣らず、ユーモアが洋服を着て走り回っているような子、それが娘だ。
もともとひょうきんさは持って生まれてきて、3歳の頃には母の血を堂々と受け継いでひょうきんガールとしてしっかり開花した。ナチュラルに面白い動きをしたり、受け応えに変顔付きでテンションを振り切ってみたり、私がちょっとボケてパパを笑わせることに成功すると、自分も負けまいとより変なパフォーマンスで大ボケをかましてくるから、その度に3人でゲラッゲラ笑う。
ボケたい人々、笑いたい人々を一緒くたにしたのが我が家であるが、娘の笑いへの貪欲さは際立っていて、家族を笑わせることに全身全霊を尽くす、言うなれば芸人魂を感じさせる気迫でめらめらと生きていた。

ある時友人家族の紹介で、名前と生年月日からその人の資質をあぶり出す「資質学」のカウンセリングを受けたことがあるのだけれど、娘の命はユニークさに強く結びついているという結果が出て、疑う余地なくその通りだったから両親で大笑いした。
人を楽しませ、元気付けることを使命感に生まれてきているようで、「わくわく」がとにかく重要なキーワードらしい。わくわくする目標、わくわくに繋がる声掛け、わくわくを共有できるふれあいが、彼女らしさを爆発させるのだそう。そろそろ何か習い事をさせた方が良いだろうかと、人並みに親らしい悩みを持つデリケートな時期だったから、「娘さんはありのまま、本来の自分で生きられているんですね」と先生からお褒めの言葉をもらった時は救われる思いだった。面白さを追求し、ただただ楽しくご機嫌で生きることが、娘にとって最善のあり方なのだとわかったら、いよいよ一気に清々しくなった。ありのままを受け入れることの尊さよ。そして、ゲラな人たちがこうして家族として集結しているのにはちゃんと意味があるんだな、縁とはこういうものなんだなと感じ入った。
資質学のおかげで、そうだろうと思っていたことがやっぱりそうだったという確信に変わって、親としてもピーヒャラピーヒャラ盛り立てる姿勢で生きていこうではないかと心に決められたのは大きかったと思う。


そんな娘は4歳になってから、笑いのレベルをぐいぐいと上げつつあった。
グルメツアーと称して博多へ旅行した時のこと。食好き家族な我々は、食欲を溜めに溜め、読み込んだるるぶを片手に新幹線で出陣した。食べようとピックアップしている物たちを何度も眺め、おいしそうだね〜と延々話し、普段は腹8分目を言い渡されている娘もそろそろはっきりさせたいという様子で「たくさん食べられる?」と確認してくるから、「うん、おいしいものたくさん食べられるよ」と答える。すると、目をつむって顔の前で両手を擦り合わせ、「ああ神さま〜、私のことを止めてください〜」と祈り、ふっと真顔に戻ったかと思うと、威厳のある低めの神っぽい声で「わかったよ」とつぶやいた。
自然に神が降臨したものだからもちろん笑い転げ、変な動きをする以外の引き出しがあったのかと驚嘆し、短いとはいえ4歳にはおそらく高度なコントをさらりとやってしまう余裕っぷりにビビった。我が家は家にテレビがないからコントや漫才を見たことはないはずだし、自力で辿り着いたんだとしたらそれこそ神のなせる技ではないか。今何が求められているか、何がウケるかを瞬時に考え判断し、抜群の演技力でもって観客を沸かせる。芸人さんがモテるのもわかる。いやそれにしても神の振る舞いほんとに神っぽ〜!
神がかっている娘を前に、驚異が大渋滞して「すごっ!すごっ!」しか言えない私は自分の語彙力のなさにやや青くなったが、そもそも知性を置いて生まれてきたことを思い出し、そこは私に似なくて本当によかったなとうんうんうなずいた。


そんな娘にとって、初めての発表会があった。歌やお遊戯、劇などの表現を通して、1年間の学びと成長を保護者と一緒に喜び合う、とってもワンダフルな発表会だ。
いつもは園内のホールで練習をする子どもたちも、本番は市内にある大ホールの舞台で、びゃーっとスポットライトを浴びながら発表する。1年の集大成とあって、保護者たちも気合いの入る華々しい行事なのだ。

年少さんである娘たちは、全員で鈴やタンバリンを使った歌合奏と、2つのグループに分かれお遊戯と劇をやる。幼稚園でいよいよ練習が始まると、「今日発表会の練習した!」と話してくれるようになり、「こうやってたまごになるんだよ〜」とどうやらたまごの役をやるらしいことを教えてくれた。楽しみだね〜と毎日のように話し、「発表会まではケガも風邪もいけんよ」と娘は並々ならぬ気合いを見せていた。

発表会まで2週間と迫った頃、発表会のプログラムや衣装説明のために保護者の打ち合わせ会が行われた。衣装は基本的に園から借りるのだが、制服のブラウスを使ったり、白タイツが必要だったり、着方にも注意点があったりするからしっかり準備しなくてはならない。プログラムも、何番の演目が終わったら控え室に子どもを連れて行く、終わったら控え室で制服に着替えさせ観客席に戻るなどが細かく決まっていて、保護者の采配力も結構重要になるからドキドキだ。我が子だけまだ控え室に来ていない!なんて先生たちをざわつかせては大変だから、流れをぎゅんぎゅん叩き込む。

衣装は、歌合奏の方は全員制服、お遊戯と劇はそれぞれ衣装が違うようで、どちらの演目に出るかで準備するものが変わるようだ。1つは「お遊戯・いろいろたんけんたい」、もう1つは「劇・たまごレンジャー」で、先生に確認してみると娘はいろいろたんけんたいに出るとのこと。…おやおや??たんけんたい??娘は確かたまごの練習をしていなかったか…?いや私の勘違いか?娘が勘違いしているのか…? とその時点で大丈夫か大丈夫かと心配で頭がいっぱいになり、たんけんたいの衣装説明を聞くのと同じ意気込みでたまごレンジャーの衣装説明も聞いた。

その日、娘が帰ってきて落ち着いたタイミングでおそるおそるどちらに出るんだっけと聞いてみると、「たんけんたいだよ!」とポーズを決めてくれた。そうかそうかたんけんたいか、そうそうたんけんたいをやるんだったね、よしよし頑張ろうね〜とようやくいつもの私が帰ってきた。

病気もせず万全の体調で迎えた当日。3人でいそいそ会場まで向かう。
開場30分前にも関わらず、受付ロビーには長い長い列ができていた。1年に1度の大舞台だから、お父さんお母さんだけでなく、兄弟姉妹、おじいちゃんおばあちゃんも揃って来られているお家も多く、それはそれは賑やかな雰囲気だった。子どもたちもわくわくが止まらない様子だ。これが園生活での最後の発表会になる年長さんたちは、無邪気な笑顔を見せながらも姿勢がすんっと凛々しくて、年中年少さんと比べると面構えが違う。最年長であり、この春には小学生になることの自覚が表情から見てとれる。立派だ。

会場内に入ると、あまりの大ホールっぷりに「なにこれ〜!あそこで発表するの!?」と幕が降りたステージを指差し興奮する。だけどそこはやはり食欲モンスター、「ねえお腹空いたね〜」と余裕だ。確かにお腹は空いたがいろいろたんけんたいはプログラム1番だから、すぐ控え室に連れて行き、楽しんでね!と手を振り客席に戻る。

今日のためにしっかり充電して連れてきた一眼を取り出し設定するも、あろうことか望遠レンズに変えてくるのを忘れて愕然とする。こういう、普段とは違う場面でやらかすのはいつだって私だ。泣きそうになるのを堪えて、パパにiphoneでアップめに動画を撮ってくれ〜と頼み、私は一眼で全体の構図を撮るから〜と宣言し、各々配置を確認する。最近のiphoneは本当に画質が良いからアップにしても十分綺麗だよほらと説明されると、なんだなんだ悲しむことはなかったのかと機嫌を良くした。

さていよいよ開幕。
かぼちゃパンツに白タイツ、バンダナを首に巻いたかわいいかわいいちびっ子たちがゆっくり現れ、いろ・いろ・たんけんたい!が流れ始める。
♫ どんないろ〜にであえるかな〜?さがしにでかけよう〜!
おでこに右手をかざし、探すポーズできょろきょろするのを観ただけでぼろっぼろ泣いてしまった。先生がいなくても20人の子どもたちは堂々と舞台に立ち、娘は列の真ん中あたり、キラッキラの笑顔で楽しそうだ。もう胸がいっぱいだ。出だしでこれだと最後はぐちゃぐちゃだろうと覚悟を決める。

♫ きいろのひまわりにこにこ〜みどりもうたう〜
右に左にと泳ぐ振り付け。先生がこっそり教えてくれた、娘の1番の見せ所だ。たぶん、胸の前から両手でぐる〜んと平泳ぎのように水を掻くのだろうが、娘は外からぐる〜んと胸の前まで水を掻くというまったく反対のスタイルだったけれど、その独特さもかわいくて笑った。

そしてサビ。
♫ ららら どんないろ〜にであえるかな?キラキラみつけていっとうしょう!
♫ こころに にじをえがいて ゆこうよどこまでも〜
ぴょんぴょんジャンプした後、くるりと背を向け、振り向きジャンプで1番!の決めポーズ。曲と振り付けの一体感にうきうきしながら、振り向きジャンプのタイミングが娘だけ少し早いことに気付く。おぉ…もしや、リーダー気質ではないだろうが元気で明るく声がでかいという点を評価されて、先導役を任されているのではないか娘よ。なんだなんだそんな大役を担うのならあらかじめ言っておいてくれれば良いのにと鼻高々になる。

曲の2番が始まり、1番とは違って誇らしさを手にした私はカメラを持つ手により気合いが入る。振り向きジャンプの一瞬をちゃんと目視しようと、カメラを持つ手を肘掛けに固定し、食い入るようにステージの娘を見つめる。
♫ ららら すてきないろであえたら ときめきうきうき だいじゅうたい!
♫ みらいに ゆめをえがいて おおきくジャンプしよう〜
…おやおや??曲の拍にはバチっとはまっているのだが、両隣の子と飛ぶタイミングが違い、そのタイミングもさっきより早くなった。あっもしかしたら3段階に分かれていて、だいじゅうたい!の「だい」で飛ぶ1軍、「じゅう」で飛ぶ2軍、「たい!」で飛ぶ3軍がいて、娘は1軍だったのでは…!
ぐぐっと視線を全体に移し観てみると、ようやく事態が飲み込めた。先導役を任されているんでも、飛ぶタイミングが分かれているんでもなく、ただ1人完璧にタイミングがずれているのだ。写真に収めたらほぼ間違いなく19人は後ろを向き、娘1人が前を向いてポーズを決めるセンター感抜群の1枚が撮れるだろう。実は、もしやもしや1人暴走しソロ舞台を楽しんでいるのではないかという疑いがじわじわ押し寄せてきていたが、完全に押し寄せられた。おそらく、気持ちが浮き立って前に前にのめっていったんだと思う。最後の最後、大サビでも迷いなく突っ走り、誰も彼女を止めることはできなかった。

隣を見ると、どうやらパパも同じことを考えて観ていたらしく、謎が解けた2人は顔を見合わせ大笑いした。感動の涙はいつの間にか乾き切り、こんなところでもしっかりオチをつけてくれたなと笑いの涙でぐちゃぐちゃになった。

人生初めての共同表現、輝かしい舞台、大勢の観客。しかも他の子の演目を見ることなくほんとのほんとに1番だから、イメージもつかみきれていない状態だったはずだが娘はやり切った。観る側が100%感動するために用意された舞台で、堂々と笑いをとった。もう圧巻だ。気持ちはスタンディングオベーションしていた。

さあそしてプログラム中盤で歌合奏の発表になるが、なんとここでも見せてくれた。
娘は最前列でとびきり大きな声を張り上げポキポキダンスを歌いタンバリンを叩いていたのだが、突然ふっと止まりぼーっとしては我に返るみたいなことを2度3度繰り返し、何かと交信してる!?それとも省エネ!?とここでもまた両親を笑わせた。

結局もうなんだか笑いっぱなしで、こんな予定じゃなかった感がすごかった。だけど「こんな予定じゃなかった」をこんなに楽しさ嬉しさいっぱいで言えるなんて幸せだなと思った。

全プログラムをやり切り、ロビーで迎えを待つ娘に最高だったよ〜!と声をかけるも、「お腹すいた〜おやつ食べさせてくれ〜」とエネルギー切れでしなしなとしていたから、早足でコンビニに行きあんぱんを買い与える。うま〜〜と一緒にもぐもぐして、自分もお腹が空いていたことに気付く。3時間、親子共々頑張ったよね。

家に帰り、娘に動画を撮ったけど観る?と聞くと観る!と言うので、3人でいろいろたんけんたいを観た。サビのところで私とパパは吹き出しそうになるが、娘は一重の人が二重にする時のような鋭い眼差しで真剣に観て、無言のまま観終えた。
ちょっと迷ったが、「なんかさ、ジャンプするのちょっと早かったよね??」と言うと、「えっどこ!?もう1回観せて!」と言うので、動画を流しながらここここ!と教えると、「ぶひゃひゃひゃ〜〜〜!!ほんとだ!あれ?ほんとだぎゃはは〜!」と笑い転げた。自分的にはバッチリ踊れていたし、自分だけ観ていると完璧なんだけど、全体として観てみたらほんとだ早い〜!と気付き、笑いが止まらなくなった模様。つられて一緒に笑う。マイワールドに入り込みすぎて気付いていなかったか娘よ。

頑張ったのに自分だけ違うことにしゅんとしやしないかと心配だったが、娘は笑い飛ばせるタイプだった。あ〜…とくよくよせず、おもろいやんと弾き返せる世界線に生きている。最高だ。私なんぞ小さな失敗ですらくよくよしてしまうのに。

正直に言えば、この先みんなで1つの作品を作り上げる機会があった時、こういうことを笑っていてはいけないのだ、笑うなんておかしいバチバチみたいな場面があるかもしれないなと思うから、こんなに笑い倒していて良いのかと思っている部分はある。だけど人間、一生懸命、全エネルギーを注いで頑張ったのならそれではなまるなんだと伝えたいし、何より、失敗を恐れ縮こまって生きるんじゃなく、堂々と自分らしく生きていってほしいなと思う。笑いの神に愛され、笑いをこよなく愛する娘をこれからも盛り上げて行こう。

とは言え、気持ちが爆上がりした時にペースがどんどん速くなり暴走しがちなことがわかったから、音楽に合わせて踊る時は落ち着いてよく聴き、拍をしっかり数えると良いであろうと教えていくつもりだ。

まーむ

さて、私は娘との思い出の曲が誕生したから嬉しくて、いろ・いろ・たんけんたい!をSpotifyのお気に入りに追加したのだが、いろんなものが込み上げはじまるや否や泣いてしまうからなかなか聴けずにいる。

子どもの発表会を観る親

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